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阿部俊暢

宮城県仙台市出身。定禅寺通りのけやき並木と同じ1958年生まれ。2003年阿部代表とともに定禅寺ハーブギャラリーを開業。夢は世界中のハーブを集めたハーブ農場の開設。JAMHA認定ハーバルセラピスト、AEAJ認定アロマテラピーインストラクター。

2018年5月24日 (木)

薬としての食物(イチゴ)

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イチゴの花(2018年5月12日:蔵王町七日原)

 

 

 久しぶりの更新です。今回はABCのシリーズ記事”HerbalEGram: Volume 12, Issue 5, May 2015”の「薬としての食物」から、“イチゴ”(ストロベリー)を取り上げます。1回目の今回は、その生育範囲と成分について、次回はその利用の歴史と現代の研究について紹介します。

 イチゴ(ストロベリー) 

http://cms.herbalgram.org/heg/volume12/05May/FaM_Strawberry.html

 

その歴史および伝統的な利用について

生育範囲

 

イチゴは多年生草本と考えられており、低く生育する性質がある。発根するランナーやほふく茎を水平方向に生育させる。(1:Holmes R. Taylor’s Guide to Fruits and Berries. New York, NY: Houghton Mifflin Company; 1996.)。それぞれの植物は、扁平の変形した茎、そこから繊維状に下方に成長する根、複数のロゼットから上方に成長する茎を持つ。イチゴは、粗い鋸歯状の縁を有する3つに分かれた小葉をつける。花は白色で、たくさんの雄蕊を持ち、多くの場合、植物の短いクラウンから生じる短い頑丈な茎の上で花房となる。花は、植物学的に言えば、花の熟成容器又は基盤である実を付ける。(1:Holmes R. Taylor’s Guide to Fruits and Berries. New York, NY: Houghton Mifflin Company; 1996.)

 

イチゴ(訳者注1,2)、ヨーロッパおよびアメリカの両方に固有である。(2:Madison D. Edible: An Illustrated Guide to the World’s Food Plants. Washington, DC: National Geographic Society; 2008.)。現代のイチゴ(Fragaria x ananassa)は、18世紀に、北米種であるバージニアあるいはスカーレット(F. viriginiana)、およびチリ、ビーチストロベリー(F. chiloensis)から改良された(1)(訳者注3)。 これらの二つの種から、甘い味と独特な香りと大きな実を生産するために交配された。今日、オーストラリア、イタリア、米国、フランス、カナダ、ニュージーランド、そして日本が商業的に最も大量のイチゴを生成している(3;Murray M. The Encyclopedia of Healing Foods. New York, NY: Atria Books; 2005.)。イチゴの世界有数の生産国は米国であり、主にカリフォルニア州で約130万トンが生産され、フロリダ州とオレゴン州が続く(訳者注4)。

 

イチゴは、様々な植物の病気や害虫の影響を受けやすい(訳者注5)。このため、従来では、栽培されたイチゴの草木や果実は、しばしば農薬や殺虫剤に悩まされる。The Environmental Working Group (EWG)は、イチゴを「ダーティ・ダズン」、一般的に有害な残留農薬が一貫して高い、大衆消費される従来産の栽培産物品目のリストの一つとみなしている(訳者注6)。

 

植物化学成分およびその構成

 

最も暗い色のベリーであるイチゴは 、6つの主要なグループに分けることができる複雑な一連の植物化学物質を含んでいる。:それは、アントシアニン、フラバノール、フラボノール、エラグタンニン、エラグ酸配糖体、及び桂皮酸抱合体である(5:Aaby K, Mazur S, Nes A, Skrede G. Phenolic compounds in strawberry (Fragaria x ananassa Duch.) fruits: Composition in 27 cultivars and changes during ripening. Food Chemistry. May 2012;132(1):86-97.)。これらの化合物は、重大な健康上の利点を持っており、その抗がん、抗菌、抗酸化、抗寄生虫、および抗ウイルス活性、同様に、血糖を調節する能力について研究がなされている。

 

アントシアニン(訳者注7)は、その抗酸化特性でよく知られており、同様に果実にその赤い色を与えるケルセチンのようなフラボノールは、抗ヒスタミンおよび抗炎症特性を有し、癌の予防に重要であると考えられている(7:Steven D. Quercetin. University of Maryland Medical Center website. Available here. Accessed April 15, 2015.)。イチゴはまたかなりの量のプロアントシアニジン(訳者注8)、フラバノール化合物を含有しており、それらは最近より多くの注目を得て、科学的研究がなされている。ブドウ(Vitis vinifera)、クランベリー(Vaccinium macrocarpon)、カカオ(Theobroma cacao)は、プロアントシアニジンの源として最もよく知られている一般的な食料であるが、イチゴは、赤および緑両方のブドウよりも高い濃度で含んでいる。(8:Liwei G, Kelm MA, Hammerstone JF, et al. Concentrations of proanthocyanidins in common foods and estimations of normal consumption. J Nutr. 2004;134(3):613-617.)。レベルの高いプロアントシアニジンおよび食品化合物はまた、特に経口カンジダ菌に対して、それらの抗真菌特性について試験室レベルでの研究が行われている。

 

訳者注:

(訳者注1:)*イチゴとは

 イチゴという言葉は、狭い意味では、バラ科、バラ亜科、オランダイチゴ属の栽培種であるオランダイチゴ学名Fragaria ×ananassa Duchesne ex Rozier) を指します。現在市場にイチゴとして流通しているものは、ほぼ全てオランダイチゴです。広い意味ではオランダイチゴ属の植物を指す場合もあります。オランダイチゴ属には、20以上の記載、多くの雑種および栽培品種があります。

 最近ハーブとして園芸店などでよく見かけるワイルドストロベリー(エゾノヘビイチゴ:Fragaria vesca)も、オランダイチゴ属のひとつです。普通のイチゴを小さくしたようなかわいらしい草姿と実が特徴です。日本にはその他、ノウゴウイチゴ(Fragaria iinumae Makino)、シロバナノヘビイチゴ(Fragaria nipponica )などがあります。

 ちなみに、野原でよく見かけるヘビイチゴは、同じバラ亜科のキジムロ属に属しています。

 *(訳者注2:)イチゴの季節について

 イチゴといえば、クリスマス、冬から早春の食べ物というイメージが定着していますが、これは温室で加温しながら栽培されるためで、本来は初夏の食べ物です。

 オランダイチゴの品種には、春に花が咲き初夏に実をつける一季成りイチゴと、夏から秋にも実をつける四季成りイチゴの品種があります。私達が一般にスーパーで目にするイチゴは、一季成り性品種に春化処理(春がきたと勘違いさせる処理)をほどこして、温室の中で栽培したものです。

 

(訳者注3:)イチゴの誕生について

 オランダイチゴは、18世紀にオランダの農園で、北米産のバージニアイチゴ (F. virginiana) とチリ産のチリイチゴ (F. chiloensis) の交雑によってつくられたとされています。日本には江戸時代の終わり頃にオランダから輸入されたとされています

 

(訳者注4:)世界および日本でのイチゴの生産量について

 果物情報サイトの果物ナビ(http://www.kudamononavi.com/)によれば、世界1のイチゴ生産国は中国の299万tであり、米国は第2位の137万tです。日本でのイチゴの生産量は年間約16万トンで第10位です。日本国内では。第1位が栃木県の2万4千tで、福岡、熊本、静岡、長崎が続きます。日本での栽培のほとんどは11 - 4月に生産されており、冬から早春の果物としてのイメージが定着しています。

 

(訳者注5)

イチゴの病気や害虫

 イチゴでよく見られる病気と言えば、うどんこ病・萎黄(いおう)病・炭疽(たんそ)病・輪斑(りんはん)病などが挙げられますが、イチゴには様々な病気があります。イチゴが病気にかかる原因は、ウイルスや細菌・カビがほとんどです。イチゴにつく害虫にはアブラムシ。コナジラミやダニ類などがあります。

 

(訳者注6)

ダーティー・ダズンとは、米国の環境NGO団体のEWGが年次報告書「Shopper’s Guide to Pesticides in Produce(農産物の残留農薬に関するショッパーズガイド)」の中で、残留農薬が最も多い農産物をダーティー・ダズン、残留農薬が比較的少ない農産物をクリーン15として公表しているものです。これによれば、リンゴが5年連続でEWGのダーティー・ダズンの第1位でしたが、2016年には慣行農法で生産されたイチゴが農産物の中で最も汚染された農産物であると判定されています。このデータはあくまでも、米国農務省と米国食品医薬品局による農産物の残留農薬レポートに基づいて作成されたものです。日本でも、イチゴは無農薬栽培が難しい作物とされており、栽培では農薬が使用されています。

 

(訳者注7)

 アントシアニンは、植物界において広く存在する色素、アントシアン(果実や花の赤、青、紫を示す水溶性色素の総称)のうち、アントシアニジンがアグリコンとして糖や糖鎖と結びついた配糖体成分のことです。フラボノイドの一種で、抗酸化物質として知られています。フラボノイド (flavonoid) は天然に存在する有機化合物群で、クマル酸CoAとマロニルCoAが重合してできるカルコンから派生する植物二次代謝物の総称です。いわゆるポリフェノールと呼ばれる化合物グループの代表例です。その中にアントシアニン、カテキンやフラバンなどを含み、7,000以上の構造が知られています。

 

(訳者注8)

 「アントシアニン」も「プロアントシアニジン」もどちらもフラボノイド系のポリフェノールの一種ですが、プロアントシアニジンはぶどうの皮などに含まれる【渋味(カテキン)】から抽出された成分です。