中国の薬草が米国の農家にニッチ市場を提供する
ハーブ•アロマテラピーを学ぶ方のための海外ハーブ事情
第189回目の話題:中国の薬草が米国の農家にニッチ市場を提供する”です。今回は、ABC(米国植物評議会)の“herbal E-gram”のリンク記事を紹介します。
中国の薬草が、米国の農家のためのニッチ市場を提供する。
デルマー、N.Y.(AP) - 米国における伝統中国医学への関心の広がりは、療法家が求める様々なハーブや、フラワーおよび樹木を栽培する農家のための、潜在的な儲かる新たなニッチ市場を作り出している。
ほぼすべての療法家は、未だ中国からの輸入に依存している一方で、そこでの野生群落の減少、同様に品質や安全性への懸念が、米国で栽培されたハーブへの需要を押し上げている。いくつかの州では、農民が最も人気の高いハーブのトライアルスタンドの確立を支援するための「栽培グループ」を設立している。
“農夫として、私は誰もまだ栽培していない植物を栽培するというアイデアが好きです。“と、アルバニーの近くデルマーに住むレベッカ.ライスは言う。彼女は、ニューヨーク州の栽培グループの30人のメンバーの中の一人である。
“このプロジェクトは、非常に魅力的です。”
ジャン.ジブレット、ニューヨークのグループを設立した研究者はまた、それは儲かる仕事である可能性があると述べている。彼女は国内産の薬用植物の市場は、2億ドルから3億ドルであると推定している。
米国では、中国伝統医学はメインストリームとして受け入れられている。
アメリカ全州で、46の州が発行するライセンス を持つ3万人の開業医が存在しており、そのライセンスは、多くの場合修士の学位、教育クレジットの継続を必要としている。2014年には、国内で最初の病院規模の漢方治療クリニックであるクリーブランドクリニックが開業している。
ジェイミー・スターキー、統合医療のためのクリーブランドクリニックセンターで鍼灸と漢方薬のライセンスを受けた開業医である、は、品質、信頼性および純度が、ハーブ製品についての重大な懸念であると述べている。
“もし米国内の生産者が、重金属や農薬による汚染なしに、中国からの種と同一である最高品質の製品を製造することができれば、私はそれが農民のための絶好のチャンスであると考えています。”と、スターキーは語っている。
一般的に、300以上の植物が伝統中国医学で使用されている。カリフォルニア州ペタルマのハーブ栽培家であるジベレッテイとペグシェーファーは、米国の農家のための市場性のある種のリストを翻訳している。それらには、その根が、痛みや炎症を軽減するために使用される顕花多年草であるAngelica dahuric、ガーデンアスターの近縁種で抗細菌特性を持っていると言われているAster tataricus、胃の病気のために使用されるミント類であるMentha haplocalyx、そして心血管疾患の治療のために使用されるセージの1種であるSalvia miltiorrhiza、などが含まれている。
国立衛生研究所は、中国伝統医学 - 鍼治療やタイチーなどの療法を含んでいる – は、主に主流の医学を補完するものとして使用されていると言う。当局は、いくつかの薬草は、深刻な副作用を持つ可能性があり、伝統的な中国医学が、治療する症状について働くかどうかを知るための十分に厳密な科学的証拠は存在していないと警告している。治療が患者ごとにカスタマイズされた植物の組合せを伴うため、臨床試験は困難である。
薬用植物の研究と保全を促進するために2008年にニューヨークのハドソンバレーのハイフォールズ基金を始めたギブレットは、植物の自然の生息地と同様の条件下で栽培することが、高品質な薬用植物を生産するためのキーの一つであると述べている。その基金は、ライセンスを受けたハーブ実務者だけに種や市場製品の信頼性を保証することができる植物を提供する。
市場調査は、高い需要と低い供給を示している、とバージニア州パイロットの漢方医学のための非営利団体であるブルーリッジセンターの会長であるロブ・グレン、は語っている。
“現在の中国からのハーブは、彼らがかつてそうであったように、そして、米国の治療医が、その栽培されたハーブのオーガニックの原理や、局所的な高い有効性のために喜んでプレミアム価格を支払うであろう品質を備えていません。”と彼は言う。
タブルーリッジセンターは、バコ地域活性化委員会からの経済開発助成金を使用して、センターが処理しライセンス実務者に販売するハーブを栽培するために地元の農家を参加させている。今年、センターは35の農場で38の種を栽培した。
センターは、品質と有効性を評価することに合意した26人の治療医に最初の収穫からサンプルを送付した。
"私たちは、最初に受け取ったサンプルに大変感動しました。"ノースカロライナ州ダーラムの東洋健康ソリューションの治療医であるケンモアヘッド、は言う。 “私たちはクリーンなオーガニックハーブに実際にアクセスできることをのぞんでいます。私は農家の方がうまくいって、地域経済をサポートする産業を持ちことができることが、環境のために良い事であり、人々の健康を向上させることであると考えています。“
経済的観点から、グレンは、年$ 15,000程度農家の収入を補うことができ、経済の疲弊した地域の農家の収入を倍増させる効果のある –作物の導入が目であると、述べた。
その目標を達成するために、農家は8年間のプロジェクトに1エーカーの土地を費やさなければならないであろう、とグレンは述べている。植物のいくつかは、市場性のある大きさに成長するために何年もかかる樹木や多年草なので、投資が最大のリターンを達成するためには時間がかかるだろう、と彼は言う。
センターの初期の研究では、その投資収益は、様々な目の病気や出血のために使用される一年性顕花植物のケイトウでは、1植物あたり$ 1.69、アンジェリカでは$ 20程度を示している。
“私達は実験を続け、農家がより高付加価値で、高需要の植物をたくさん栽培できるよう努力しています。”と、グレンは語っている。
<解説>
近年では、欧米でも中国医学は、Traditional Chinese medicine (TCM、伝統中国医学)の名で、補完・代替医療として認知され、広く行われています。アーユルヴェーダ(インド伝統医学)・ユナニ医学(ギリシャ・アラビア医学)と共に三大伝統医学に数えられています。日本の漢方医学は、中国から伝来した医学が日本で独自に発展したものであり、重視する理論や診断法、使用する生薬量などに違いがあります。
英語では“漢方薬”は、“traditional chinese medicine”“Chinese medicine”となります。また、単に“a herbal medicine.”と書かれていることもあります。
日本の漢方薬の現状について、日本漢方生薬製剤協会のWebページをリンクしておきます。
http://www.nikkankyo.org/kampo/guide_galenical.html
記、訳 阿部俊暢
参考資料
* フリー百科事典ウイキペデイア 日本語版