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阿部俊暢

宮城県仙台市出身。定禅寺通りのけやき並木と同じ1958年生まれ。2003年阿部代表とともに定禅寺ハーブギャラリーを開業。夢は世界中のハーブを集めたハーブ農場の開設。JAMHA認定ハーバルセラピスト、AEAJ認定アロマテラピーインストラクター。

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2014年10月23日 (木)

より多くの寄生虫が耐性を持ち、マラリアの最強の医薬品が時代遅れになる。

第163回目の話題:“より多くの寄生虫が耐性を持ち、マラリアの最強の医薬品が時代遅れになる。”です。米国植物協議会  The American Botanical Council(通称「ABC」)の(ABC  HerbalEGram2014年7月号)のリンク記事の翻訳記事と解説です。

http://cms.herbalgram.org/heg/volume11/August2014.html

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写真:フリー百科事典 ウイキペデイア英語版より

より多くの寄生虫が耐性を持ち、マラリアの最強の医薬品が時代遅れになる。

 

感染症と戦うための私たちの能力の低下の話になると、我々の時間は限られているように思われる。証拠が、いつか細菌が一般的な抗生物質に対する免疫を持つようになることを示逡している。同様に、マラリア原虫は、アルテミシニンと呼ばれる1990年代半ばに導入された強力な併用薬を含む抗マラリア薬への耐性を発達させてきた。新しい研究では、科学者たちは、これらの薬剤への耐性を防ぐためには“ラジカルな措置”がとられなければならない、そうでなければ、病気が流行している国々は巨大な停滞に直面するだろう、という。

研究は、オックスフォード大学のニコラス·ホワイトに率いられており、彼はまた、世界的な抗マラリア耐性ネットワークの議長でもある。アルテミシニンへのマラリア耐性が発見され、病気と闘うためにと組み合わせて使われているその薬は、カンボジア、タイ、ベトナム、ミャンマーなどの東南アジアの主要な地域に広がっている。 “アルテミシニンに対する耐性は抑制されておらず、現在、表面化し、東南アジア全体に広がっている。”と研究者らは書いている。これらの薬剤に対する耐性は“マラリア制御においての実質的な効果を無効にするに十分である。新しい抗マラリア薬が開発中であるが、利用可能になるためには数年かかるであろう。”と付け加えている。

 

ワームウッドに由来するアルテミシニンは、何世紀にも渡って利用されてきた(古代の中国人はそれを使用していた)。けれども、クロロキンやスルファドキシン·ピリメタミンなどの抗マラリア薬が耐性から時代遅れになった後では、唯一抗マラリア薬として広く使用されるようになった。世界保健機関(WHO)によると、およそ3,4億人がマラリア感染の危険にさらされており、97カ国全体でいまだ流行している。もしアルテミシニン耐性の道が継続される場合は、マラリアは、増々多くの人々に影響を与え、健康なコミュニティのためのすべての進歩を否定して、戻ってくるであろう。

 

“そのことは私たちが予想していたものより悪化しています。"ホワイトはBBCに語った。 ”私達が何かを行おうとする場合は、迅速に行動しなければなりません。"このことを行うために、研究者は、病気の人が治療を受ける時間の量を増加させることを提案している。3日間抗マラリア薬を服用するよりも、6日間それらを摂取するべきである - この解決法は、しかし、一時的なものである。

 

研究者らは、マラリアが流行している10カ国で感染した患者の血液を試験することにより、どのくらい耐性が悪化しているかを発見した。各患者は、三日間アルテミシニン誘導体の処方および3日間のアルテミシニン併用療法を受けた。プレリリースによれば、タイ·カンボジア国境に沿って生活している患者中では、寄生虫を血液からきれいにするのに要する時間の中央値は7時間であった。一方、コンゴ民主共和国、研究で試験した3つのアフリカの国のうちの一つ、に住んでいた患者(他の2つは、ケニアとナイジェリア)は、2時間弱未満で彼らの血液を寄生虫からきれいにした。

 

これらの知見は、全体の問題についての明るい希望であった。研究者によれば、東南アジアのアルテミシニンへのそのような高耐性にもかかわらず、試験された3つすべてのアフリカ諸国ではほとんど耐性が見られなかった。つまり、マラリアによる死亡の90%以上がサハラ以南のアフリカで発生していることを考えると、それは巨大である。研究者は耐性寄生虫のDNAを分析することによって、耐性の広がりをマッピングし、うまくいけば、アフリカに到達するのを防ぐことができるだろうと信じている、とガーディアンは報じている。

 

“それらを排除することにより、アジア全域、その後アフリカへのアルテミシニン耐性マラリア原虫の拡散を防止することが可能であるかもしれませんが、その機会の窓は速く閉じてしまいます。"ホワイトは言った。 ”従来のマラリア制御のアプローチは十分ではありません - 私たちは、より根本的行動を取り、即刻、世界的な公衆衛生のプライオリテイーを確立する必要があります。"

 

出典:アシュリーE、白N、Dhorda M、ら。熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)マラリアにおけるアルテミシニン耐性の普及。ニューイングランド医療ジャーナル。 2014。

 http://www.medicaldaily.com/malarias-strongest-drug-becoming-obsolete-more-parasites-become-resistant-296286

                       

 

 

解説

 1.マラリアとは

マラリアは、熱帯から亜熱帯に広く分布する原虫感染症です。高熱や頭痛、吐き気などの症状を呈し、悪性の場合は脳マラリアによる意識障害や腎不全などを起こし死亡します。古典などで出てくる瘧(おこり)とは、大抵このマラリアを指しています。

 マラリアの病原体は単細胞生物であるマラリア原虫(Plasmodium spp.)で、ハマダラカ(Anopheles spp.)によって媒介されます。ハマダラカは、カ科ハマダラカ亜科ハマダラカ属(学名: Anopheles)に属する昆虫の総称です。世界におよそ460種が知られていますが、一般にマラリア原虫をヒトに媒介しているのは、そのうちの30 - 40種です。その中で、最も知られているのが、マラリア原虫の中でももっとも悪性である熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)を媒介するガンビエハマダラカ(Anopheles gambiae)です。

2.抗マラリア薬

 マラリアの特効薬として第二次世界大戦頃までは極めて重要な位置づけにあったのはキニーネです。キニーネ(またはキニン、英: Quinine)は、キナ(機那)の樹皮に含まれるアルカロイドです。 キナ属の植物は南米のアンデス山脈に自生しており、先住民のインディオはキナの樹皮を解熱剤として用いていました。その後、キニーネの構造を元にクロロキンやメフロキンなどの抗マラリア薬が開発され、キニーネは副作用が強いため代替されてあまり用いられなくなりました。

 しかし、熱帯熱マラリアにクロロキンやメフロキンに対して耐性を持つものが多くみられるようになったため、古くから漢方薬としても使用されていたワームウッドから抽出されたアルテミシニシが、現在世界中で使用されています。

3.スイートワームウッドとは

 スイートワームウッド(Artemisia annua)は、キク科ヨモギ屬の1年草です。南東ヨーロッパから、ベトナム、インド北部の、ユーラシア大陸原産ですが、世界中の多くの地域(アルゼンチン、オーストリア、チェコ共和国、フランス、ドイツ、ハンガリー、イタリア、ポーランド、スロバキア、スペイン、スイス、米国を含む)に帰化しています。 日本でも、和名をクソニンジン、バカニンジンといい、本州及び九州に分布しています。

 草丈約1メートル(栽培で2メートル)。葉は黄緑色で上面に粉状の小さな毛があり、3回羽状に細裂します。花期は7〜9月で、黄色の小さな頭花を穂状につけ、全体は大きな円錐状をなします。全草に独特の悪臭があります。

 スイートワームウッドは、伝統的な中国医学(TCM)の原料であり、発熱を軽減するために2000年以上使用されてきました。 TCMでは、それはしばしば(発熱に加えて)黄疸、頭痛、めまい、鼻血を治療するために他のハーブと組み合わせて処方されます。

 スイートワームウッドの抗マラリア活性への科学的研究は、マラリア( マラリア種 )を引き起こす原虫寄生虫の確立された抗マラリア薬に対する耐性増加に対応して、1970年代初頭に始まりました。 スイートワームウッドの葉の中で自然に発生する化学物質のアルテミシニン*1は、強力な抗マラリア薬であり、最も致命的なマラリア原虫である、熱帯熱マラリア原虫 (それは寄生虫の無性赤血球段階に選択的に毒性がある)を殺すことが可能です。スイートワームウッドから抽出されたアルテミシニンは、多くの他の抗マラリアへの薬剤耐性*2が広まったことより、マラリアの治療にとって非常に重要な存在になっています。

                        記 阿部俊暢

*アルテミシニン

 アルテミシニンは、エンドペルオキシド橋をもつセスキテルペンラクトンであり、抗マラリア薬として半合成生産されている。古くから漢方薬として利用されていたヨモギ属の植物であるスイートワームウッド (Artemisia annua) から分離・命名された。多薬剤耐性をもつ熱帯熱マラリアにも効果的である。

*薬剤耐性

 薬剤耐性(あるいは単に耐性、drug resistance)とは、生物が、自分に対して何らかの作用を持った薬剤に対して抵抗性を持ち、これらの薬剤が効かない、あるいは効きにくくなる現象のこと。薬剤抵抗性、薬物耐性とも呼ばれる。

                                                                                 記、訳 阿部俊暢

参考資料

*英国王立園芸協会 ハーブ大百科

*牧野和漢薬草大図鑑

*最新薬用植物学

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