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阿部俊暢

宮城県仙台市出身。定禅寺通りのけやき並木と同じ1958年生まれ。2003年阿部代表とともに定禅寺ハーブギャラリーを開業。夢は世界中のハーブを集めたハーブ農場の開設。JAMHA認定ハーバルセラピスト、AEAJ認定アロマテラピーインストラクター。

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2014年6月

2014年6月28日 (土)

乳がんの転移がピーチエキスによって遅延する可能性がある(2)

第150回目の話題:“乳がんの転移がピーチエキスによって遅延する可能性がある(2)”です。前回の米国植物協議会  The American Botanical Council(通称「ABC」)の(ABC  HerbalEGram2014年4月号)のリンク記事の解説です。

http://cms.herbalgram.org/heg/volume11/April2014.html

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フリー百科事典ウイキペデイアより

 

前号より続く。

近年、食品の成分の化学的研究が進む中で、食品は3つの機能を持つという考え方が提示されています。従来の生命維持に欠かせない栄養機能(1次機能)、味や香りの感覚機能(2次機能)に加えて、病気の予防を含む体調調整機能(3次機能)が注目を集めています。3次機能を有する成分には、ポリフェノールなどのフィトケミカル成分や食物繊維など非栄養成分があります。イチゴやモモなどの果物も従来の栄養成分や味覚に加えてこのフィとケミカル成分を豊富に含んでおり、特にポリフェノールなどの抗酸化作用はあちこちで注目を浴びています。今回の記事では、動物実験の効果であり、実験の詳細が記述されていないため真偽のほどはわかりませんが、この研究も食品の3次機能に着目するという近年の大きな流れの中にあると考えられます。今後もこのような研究が増えると思われます。

 1.モモについて

モモ(桃:Prunus persica )はバラ科モモ属の落葉小高木、また、その果実のことをさします。原産地は中国西北部の黄河上流の高山地帯と考えられています。ヨーロッパへは紀元前4世紀頃にはシルクロードを通り、ペルシア経由で伝わったとされており、紀元前4世紀にはすでにギリシャにそれについての記述があります。英名のピーチ(Peach)は“ペルシア”が語源で、ラテン語のpersicum malum(ペルシアの林檎)から来ています。種小名persica(ペルシアの)も同様の理由によります。

 日本では、縄文時代前期の遺跡から桃核が出土しており、これが日本最古とされています。平安、鎌倉時代は主には薬用、観賞用として珍重され、江戸時代に全国的に広まったと考えられています。食用として広まったのは明治時代に入ってからです。

 モモは2500年以上にわたって中国で栽培されてきており、洋の東西で薬用としても利用されてきました。

英国王立園芸協会のハーブ大百科には以下のように記載されています。

<利用部位>葉、樹皮、実、花、種子(桃仁)、オイル

<特徴>苦甘い、慰撫、緩下剤性のハーブで、鎮咳、解熱、利尿、去痰作用があり、子宮、循環器系を刺激する効果がある。

<薬用>西欧では胃炎、百日咳、気管支炎に樹皮と葉を、中国ではマラリア、腫物、内痔核、湿疹に葉を、便秘、浮腫に花を、高齢者の便秘、咳、喘息、月経困難症に種子をそれぞれ内服する。妊娠中に使用してはならない。

<実用>オイルはアーモンドオイルの代替物としてスキンクリームに使用される。実は菓子、アイスクリームの香味料にする。

 

牧野和漢薬草大図鑑には以下の記載があります。

【薬用部分】種子(桃仁:トウニン)、花蕾(白桃花)

【薬効と薬理】詳細は不明だが、民間的には種子は浄血。鎮咳、消炎、花蕾に緩下、利尿などの作用があることが知られており、月経不順、下痢、浮腫などに用いられる。

【使用法】種子に水を加え砕き、青酸含有量を0.1%以下に規定したものを桃仁水といい、鎮咳薬にするが、用量を誤ると死亡する恐れがあるため、医師の指示の元に慎重に使用する。

 2.サクラ(Prunus) 属について

落葉、あるいは常緑の高木約430種類があり、その大半は温帯北部や南アメリカに分布しています。サクラ、モモ、アンズ、スモモ、アーモンド、ウメをはじめ、果実や堅果が経済的に重要な種類や主にその花を愛でるために植栽されている品種が数多くあります。

 多くの種類が薬用に使用され、皮膚軟化オイルから咳止め、緩下剤までさまざまな治療効果のある成分が採取されています。アンズ(P.armeiaca)とウメ(P.mume)が初めて処方箋に記載されたのはAD.500年代です。大部分の薬用成分はアミダグリンとプルナシンに起因しています。これらは水の中で分解するとシアン化水素酸(青酸)になります。この猛毒成分は少量使用すれば、呼吸器系を刺激し、消化機能を改善し、幸福感が得られるとされています。

 英国王立園芸協会のハーブ大百科には以下の種が記載されています。

Prunus armeniaca:ワイルドアプリコット、アンズ

Prunus domestica:プルーン

Prunus dulcis:アーモンド

Prunus japonica:チャイニーズプラム

Prunus lauricerasus:チェリーローレル

Prunus mume:ジャパニーズアプリコット、ウメ

Prunus persida:ピーチ、モモ

Prunus serotina:ラムチェリー

 3.モモに含まれている成分について

 モモには、食物繊維、ビタミンEをはじめ栄養成分が豊富に含まれています。その上、カロリーが低いのが特徴です。ビタミンEは抗酸化作用がある事が知られています。先にも述べたように、食物繊維のペクチンは、近年の研究により、コレステロール正常化作用や腸内細菌叢改善作用があることが示逡されています。モモに含まれるポリフェノール成分として、カテキン、エピカ゜ロカテキン、クロロゲン酸、ネオクロロゲン酸などが報告されています。ポリフェノール類は、近年の研究によりその強い抗酸化作用が知られており、その抗癌効果が期待されています。

 4.アミグダリンについて

 アミグダリン (amygdalin) は、アンズ、ウメ、モモ、スモモ、アーモンド (ハタンキョウ) 、ビワなどのバラ科サクラ属植物の未熟果実の種子にある仁<じん>に多く含まれる青酸配糖体です。同じバラ科植物にはプルナシンという青酸配糖体もあります。青酸配糖体は、微量ですが未熟な果実の果肉や葉、樹皮にも含まれています。

 アミグダリンを含む果実を傷つけたり、動物が食べたりした時、酵素によって分解され、シアン化水素 (青酸、HCN) を発生します。シアン化水素は非常に強い毒物で、細胞の呼吸を阻害します。アミグダリンの多量摂取による有害作用としては、悪心、嘔吐、頭痛、目まい、血中酸素の低下による皮膚の青白、肝障害、異常な低血圧、眼瞼下垂、神経障害による歩行困難、発熱、意識混濁、昏睡、死亡などが知られています。

 英国王立園芸協会のハーブ大百科の記述にもあるように、サクラ属の薬用利用は、このアミダグリンと関連しておりその使用には十分な注意が必要です。

4.アミグダリンとがんとの関連

 アミグダリンの抗がん作用については長期間にわたり議論が続けられてきました。米国の生化学者Ernst Krebsがビターアーモンドの仁から抽出したレートリル (=アミグダリン) ががんの増殖を抑制するとの説を唱えたことから、米国やメキシコを中心にがんの治療に用いられた時期がありました。しかし、米国国立がん研究所 (NCI) は、レートリルの効果を検証した臨床研究 (PMID:7033783) に基づき、『レートリルはがんの治療、改善および安定化、関連症状の改善や延命に対しいずれも効果がなく、むしろ青酸中毒をおこす危険性がある』という結論を出しています。現在、FDA (米国食品医薬品局) は米国内でのレートリルの販売を禁じています。

5.モモの安全性について

 モモの種子は青酸配当体のアミダグリンを含んでおり、メデイカルハーブ安全性ハンドブックではクラス3(医療従事者の監督下でのみ適切に使用すること)に分類されています。

 モモの葉および樹皮についても、種子よりはその含有量が著しくすくないとされてはいますが、同じクラス3分類です。

 

                           訳、記 阿部俊暢

 参考資料

*  フリー百科事典ウイキペデイア 英語版、日本語版

*  牧野和漢薬草大図鑑

*  英国王立園芸協会 ハーブ大百科

*   独立行政法人国立健康•栄養研究所の「健康食品」の安全性•有効性情報web

*  メデイカルハーブ安全性ハンドブック