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阿部俊暢

宮城県仙台市出身。定禅寺通りのけやき並木と同じ1958年生まれ。2003年阿部代表とともに定禅寺ハーブギャラリーを開業。夢は世界中のハーブを集めたハーブ農場の開設。JAMHA認定ハーバルセラピスト、AEAJ認定アロマテラピーインストラクター。

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2014年3月

2014年3月27日 (木)

NTPのイチョウ毒性レポートの重要性についての専門家の質問(3)

第139回目の話題:“NTPのイチョウ毒性レポートの重要性についての専門家の質問(3)”です。認知症に効果があるとされているハーブ“イチョウ”の毒性についての記事です。米国植物協議会  The American Botanical Council(通称「ABC」)の(ABC  HerbalEGram2013年11月号)の記事を翻訳してご紹介します。長文の為、3回にわけて掲載しています。今回は最終回です。

http://cms.herbalgram.org/heg/volume10/November2013.html

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イチョウ茶

撮影:阿部俊暢

 

結論

 ABCの諮問委員会のメンバーでありNTPへのABCのコメントの共著者で、栄養補助食品の安全性と毒性管理の専門家であるリック·キングストンによると、“ GBEのレビューのために選び出された元々の理由の一つが、以前NTP内で研究され、始めに、潜在的に発癌性がある’ことが判明し、その後‘既知の突然変異原である’と識別され、NTPにとって懸念の物質であるケルセチンが含まれているという事実があることは考慮する価値がある。それでも、果物、野菜、そして他の植物をベースとした他の食物源に、普遍的に天然に存在するケルセチンの禁止を求める科学者は、ほとんど存在しない。これらのNTPの研究の有用性は、しばしば単に仮説の一般論であることを示している-つまり、異常な、または特定の状況下での使用において有害事象の要因となる、または引き起こす可能性のある物質を探すことである-このように、それらは単に進行中の調査の第一ステップである” (電子メール、 2013年5月2日)

 ノートルダム大学の哲学教授であるGary Gutting博士が、最近ニューヨーク·タイムズ の" Opinionater “の小片で書いている。”一般的なメディア報道が‘科学的成果’をほぼ毎日報告していることは、普通の読者ならだれでも知っている。 ···どの程度真剣に我々はそのこと扱う必要があるのか?”*27

Gutting教授は、科学の因果関係対相関関係に関連した問題、– 多くの場合、結果は単純に一つの変数の変化が他の変化と相関していることを示しており、必ずしも(あるいは関連する)その変化が原因ではないという考え–、そして、科学におけるゴールデンスタンダードである無作為化比較試験(RCT )、それはうまく設計された研究では交絡変数の数を制限することを目的としている、について論じてきた。

Guttingは書いている。科学報道は、多くの場合、 "そのような研究が通常全体的な科学的なプロセスの中で果たす限定された役割を説明していない....。実際には、ほとんどの科学的な結果は即時の実用的な価値はない;それらは単に、真に有用である可能性がある最終的な結果に私たちを近づける小さな一歩を踏み出すだけである。“ *27

アーカンソー大学のガーリー博士によると、読者は最近のGBEのNTPレポートからどのような強力な結論を出すことをも躊躇すべきである。 “考慮すべき最優先のポイントは、ラットは人間ではないということです。"と彼は述べた。 ”それらの代謝は、ヒト...とは異なり、多くの発癌物質へのそれらの応答は、ヒトのそれとは異なる。研究から導かれた結論は、私の意見では、他のイチョウの抽出物または人間に移し替えられるものではありません。 "

 ライダー博士は、HerbalEGramでの彼女のコメントで、NTPは政府と国民に、様々な個人や団体によって提案された化合物の潜在的な発がん性や毒性学についての情報を提供しており-この場合には、国立がん研究所 によって- -より多く

データを必要としている-と指摘している。

 “我々の目的は、公共および他の政府機関に、重大な暴露の可能性がある薬剤について、可能な限り最高の毒性や発がん性のデータを提供することです。"とライダー博士は書いている。 ”加えて、この時点で、我々は、どの特定の化学成分(単数または複数)またはGBEの成分の組み合わせが、ラットおよびマウスにおけるGBEの発癌性効果の原因であるかわかりません。このことを決定するためにはさらなる研究が必要です。 "

 *CSPIのイチョウのプレスリリースのすぐ後に、組織は、同様に、Chemical Cuisine guide中の植物の安全評価を“避ける”にダウングレードすることによってアロエベラ( Xanthorrhoeaceae )を非難した*28。この消費者へ警告は、2013年8月に公開されたアロエベラ由来の調製にけるNTPの毒物や発がん性報告書に基づいている。この調査結果は、一部の専門家や組織が疑問視されてきた。特に、 NTPは10,000-13,000 ppmのアロイン、刺激性緩下薬が含まれている、非煎剤(未精製、濾過されていない)の A.ベラを使用していた。国際アロエ科学評議会の声明によると、このことは、消費者が利用可能なアロエ製品に見いだされるもののおよそ2000倍以上である*29。

原文は以下を参照のこと。        記、訳:阿部俊暢

 http://cms.herbalgram.org/heg/volume10/11November/UpdatedGingkoNTPreport.html?t=1383314531

原文参考資料

26 . Hilton MP, Zimmermann EF, Hunt WT。耳鳴りのためのイチョウ。コクランデータベースSyst Rev2013 。利用可能。 2013年8月20日にアクセス。

27 . Gutting G。科学的研究は何を示しているのか? New York Timesのウェブサイト。利用可能。 2013年4月25日アクセス。

28 . CSPIは語る。消費者はアロエベラの経口摂取を避けなければならない。2013年8月21日:ワシントンD.C. CSPIのウェブサイト。

利用可能。2013年は9月5日アクセス。

29 .消費者の注意:アロエベラについての事実を得る[プレスリリース]。

シルバースプリング、メリーランド州:国際アロエ科学評議会。

 2013年9月3日。利用可能。2013年は9月13日アクセス。

30.アロエベラの光発癌性の研究[ CAS番号。 481-72-1 (アロエエモジン) ] SKH- 1マウス(擬似太陽光の光での局所適用試験) 。

Natl Toxicol Program Tech Rep Ser.2010年9月: 553):7-33, 35-97, 99-103 passim

31. F344 / NラットとB6C3F1マウス(飲料水の調査)におけるアロエベラ·ミラー(アロエベラ)のNoncolorized全葉抽出物の毒性および発癌性の研究。National Toxicologyウェブサイト。利用可能。

32 . F344 / NラットとB6C3F1マウス(飼料の調査)におけるゴールデンシールルート粉末(Hydrastis Canadensis)の。

Natl Toxicol Program Tech Rep Ser.:2010 8月、( 562 ) :1- 188 。

33 . F344 / NラットとB6C3F1マウス(資料調査)でのミルクシスル( CAS番号84604-20-6 )抽出物の毒性および発癌性の研究。

Natl Toxicol Program Tech Rep Ser. :2011年5月( 565 ) :1- 177 。

34 .F344 / NラットとB6C3F1マウス(強制経口投与試験)における人参( CAS番号50647-08-0 )の毒性および発癌性の研究。

Natl Toxicol Program Tech Rep Ser.:2011 9月、( 567 ) :1- 149 。

 35 .C57BL/6NTACマウスでのセンナ( CAS番号8013-11-4 )の毒性研究、および遺伝子改変されたC3B6.129F1/Tac-Trp53tm1Brdのhaploinsufficientマウス(資料調査)でのセナの発癌性研究。

Natl Toxicol Program Genet Modif Model Rep.2012 4月、( 15 ) :1- 114 。

36 . F344 / NラットとB6C3F1マウス(強制経口調査)におけるカバカバエキス( CAS番号9000-38-8 )の毒性および発癌性の研究。

 Natl Toxicol Program Tech Rep Ser.:2012 年3月、( 571 ) :1- 186 。

 37 . F344 / NラットおよびB6C3F1 / Nマウス(強制経口投与試験)でののイチョウ葉エキス( CAS番号90045-36-6 )の毒性および発癌性の研究。

Natl Toxicol Program Tech Rep Ser2013月、( 578 ) :1- 183 。

解説:

 ギンコウ(イチョウ)葉は、認知症に効果があるということで欧米で注目を浴びているハーブですが、最近、アメリカで発癌性の懸念が指摘され、多いに議論を呼んでいます。最もその懸念は、マウスによる試験の結果でありヒトにそのままあてはまるかについては、記事にもあるようにおおいに議論の余地があります。

 もうひつつ重要なことは、今回の指摘はギンコウ(イチョウ)葉そのものではなく、イチョウより製剤されたイチョウ製剤(イチョウサプリ)での問題であるということです。当然、製剤されば成分が濃縮され、毒性成分を含む場合は危険性が増すことになります。近年、日本でも天然の成分を濃縮した様々なサプリメントが販売されるようになっていますが、その安全性についてまだ不明なことが多く今後の研究がまたれます。

 以下に、イチョウについての概要を記載します。

 1.イチョウとは

 イチョウ(銀杏:Ginkgo biloba)は、裸子植物の1種で、裸子植物門イチョウ綱の中で唯一の現存している種であり、そのため生きた化石と呼ばれています。中国原産の落葉高木で、高さは20 - 30mまでなります。多くの都道府県・市区町の木に指定されており、東京都のシンボルマークがイチョウなのは有名です。

 イチョウの種子は、銀杏(ぎんなん、ぎんきょう)と言い、殻を割って中の仁が調理されます。彩りを兼ねて茶碗蒸しなどの具に使われたり、酒の肴としても人気があります。

2.日本での薬用用途

 牧野和漢薬草大図鑑には以下の記載があります。

薬用部分:種子(銀杏)、白果(ハクカ)。

薬効:鎮咳、夜尿症に用いられる。鎮咳、去痰薬として用いる場合は、生薬5g〜10gを煮てその汁とともに食べるか、焼いて食べるとよい。多色または生食すると中毒をおこし、ときに死亡することもあるので注意が必要。

また夜尿症に用いる場合には、就寝前に子供の歳と同数だけ銀杏を煮るか焼いて食べさせる。

 生薬名、白果(ハクカ)とありますが、最新薬用植物図鑑には、日本では医薬品としての使用は許可されていないとありますので、もっぱら民間療法での使用と思われます。

 3.西欧でのイチョウ

 イチョウは、日本、中国から1727年にヨーロッパにもたらされ、栽培されるようになったといわれています。日本や、中国漢方で古くから利用されてきた種子ではなく、西欧ではもっぱら葉に関しての研究がなされ、ドイツではイチョウ葉のエキスが血管障害の薬として開発され、他のヨーロッパ諸国でも多く使われるようになっています。近年ではアメリカでもdietary supplementとしてよく使われており、日本にも輸入されています。

 ハーブ大百科(王立園芸協会)では、“主成分のひとつギンコライドは、他のどのような植物にも見られないもので、PAF(血小板活性因子)を阻害し、アレルギー反応を抑制する作用がある。ギンコウ•フラボノイド類は循環器系機能向上に特に効果があるようである”と記載されています。

 4.イチョウの有効性についての研究 

 イチョウは以下にも述べるように、西欧(特にドイツ)でもっとも臨床研究を含む研究がなされているハーブの一つです。

 “過去30年間で、イチョウリーフの独自標準化抽出液に対して行われた400の科学的研究が存在している。主要な研究は、カールスルーエ、ドイツのW.シュワーベ社、独自抽出物EGb-761の生産者、によって実施された。乾燥抽出物は、薬学的に乾燥したリーフの35-67:1比の最終抽出物に調製され;標準24%のギンコフラボノール配糖体(ケルセチン、ケンフェロール、およびイソラムネチンのようなフラボンに基づく)と6%のテルペンラクトン(ギンコライドとビロバリド)の標準化が行われる。 化学、薬理学、毒物学、そしてEGb761の臨床適用の様々な分野で行われた臨床試験をレビューした包括的な、ほぼ網羅した、401ページの本が公開されている(DeFeudis、1998)。

 一般に、イチョウリーフエキス(GBE)は、その神経保護作用の特性と高齢者の循環障害を助ける能力、特に脳の機能不全の問題とその結果として認知効果、末梢循環障害、特に間欠性跛行(下肢の血行不良)、めまいと耳鳴りのために、ヨーロッパで普及して、現在は米国と世界の他の地域でも広く使用されている。 高山病に対する防護、男性の勃起不全の仲介の新しい用途も検討されている。“      

  *ABC(アメリカ植物評議会)Web拡張モノグラフより

  ここで注意すべきは、研究はイチョウ葉エキスより抽出製剤された標準化されたエキスについてのものだということです。Eコミッション(ドイツ植物委員会)のモノグラフでも、上記標準化されたイチョウエキスについてだけが承認されたモノグラフに含まれており、他のイチョウ製品については未承認となっています。

*ABC(アメリカ植物評議会)Web ドイツEコミッションモノグラフより

  市場には、名称はイチョウ葉エキスでも、イチョウ葉エキスの含有量、品質の異なるさまざまな商品があります。これらは臨床試験を行っているイチョウ葉エキスと規格や品質が同等であるとは限りません。そういう意味で、一般的なハーブの効果を臨床試験の結果により評価することは非常に困難を伴うということがいえます。

 今回の問題でも、試験で使用しイチョウ製品の選定が、大きな問題となっています。

 5.日本でのイチョウエキスの使用

 日本でも健康食品としてイチョウエクストラクトが広く販売されています。

 イチョウ葉エキスを健康食品等として利用するためには、有効成分と有害成分の規格がなければ、安全に利用することはできません。そこで、一般にイチョウ葉エキスの規格品としては、「フラボノイド類を24%以上、テルペノイド6%以上を含有し、ギンコール酸の含有量が5ppm以下」という規格が用いられています。日本でも(財)日本健康・栄養食品協会がイチョウ葉エキスに対して同様の基準を設けています

  (健康補助食品規格基準集(追補)、平成15年1月15)

*  厚生労働省の「健康食品」のホームページwebサイトより

6.イチョウの安全性

 メデイカルハーブ安全性ハンドブックには、イチョウの葉と種子についての記載があります。

 葉は、クラス2d—薬用のMAO阻害薬に影響を与える可能性がある。

   イチョウ葉製剤は一般に副作用は報告されていない。

   まれにおこる頭痛と胃腸障害のみが報告されている

 種子は、クラス2d-長期の使用、過剰の摂取をしてはならない

 さまざまな文献はイチョウ種子の毒性について、同一の見解を示している

 わけではない。カナダにおいては、規制により本品を食品として使用することは禁止されている。新鮮な果肉質の果実は、皮膚炎、消化障害と他の不快な症状を起こす可能性がある。

 と記載されています。

★ 日本での安全性についての記述

先の厚生労働省のWEBサイトには以下の記述があります。

 “イチョウ葉エキス摂取による副作用として、まれに軽度の胃腸障害、頭痛、アレルギー性皮膚炎が認められています。イチョウ葉エキスを有効に利用するためには、適切な摂取量を守ることが重要です。”

 また、ギンコール酸のアレルギーについても記載されていました。

 医薬品との相互作用についての記載もありました。詳細は、独立行政法人 国立健康•栄養研究所の「健康食品」の安全性•有効性情報をご覧ください。

 •懸念される事象

   相互作用による出血傾向の増加

   薬物代謝作用の増強による薬品効果の源弱 など

 

 これまで、発癌性についての記述はありませんでしたが、今回の問題を受けで各機関がどのように判断するか、今後の情報がまたれます。

                       記  阿部俊暢

参考資料

*ABC(米国植物評議会)Web  ドイツEコミッションモノグラフ、拡張モノグラフ、

*メデイカルハーブ安全性ハンドブック(メデイカルハーブ広報センター)

*ハーブ大百科(英国王立園芸協会 誠文堂新光社)

*牧野和漢薬草大図鑑(北隆館)

*最新薬用植物学(廣川書店)

*独立行政法人国立健康•栄養研究所Web 健康食品」の安全性•有効性情報