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阿部俊暢

宮城県仙台市出身。定禅寺通りのけやき並木と同じ1958年生まれ。2003年阿部代表とともに定禅寺ハーブギャラリーを開業。夢は世界中のハーブを集めたハーブ農場の開設。JAMHA認定ハーバルセラピスト、AEAJ認定アロマテラピーインストラクター。

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2014年1月

2014年1月28日 (火)

おさまる気配なしでジンジャーの価格が急騰する (2)

ハーブ•アロマテラピーを学ぶ方のための海外ハーブ事情

第127回目の話題:“おさまる気配なしでジンジャーの価格が急騰する

(2)”です。米国植物協議会  The American Botanical Council(通称「ABC」)の(ABC  HerbalEGram2013年11月号)の翻訳記事の解説です。

http://cms.herbalgram.org/heg/volume10/November2013.html

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Latina: Zingiber officinale.

Русский: Имбирь.

日付        1897年

原典        List of Koehler Images

作者        Franz Eugen Köhler, Köhler's Medizinal-Pflanzen

 

 今回は、われわれにもおなじみの、生姜(ジンジャー)について解説します。

 

1.ジンジャー(ショウガ:Zingiber officinale)について.

ジンジャー(ショウガ:Zingiber officinale)は熱帯アジアを原産とする。ショウガ科、ショウガ属の多年草です。

 草丈、30~50 cm。根茎は多肉質で横臥し、節から草質の偽茎を出します。偽茎は、各々の葉の葉柄が折り重なるように巻いたものです。日本では花をつけませんが、暖地ではまれに開花します。花は根茎から別の茎として出て、地上に鱗片の重なった姿を見せます。花はその間から抜け出て開き、黄色く、唇弁は赤紫に黄色の斑点を持っています。

 

 ジンジャー(ショウガ)は古代から薬用、治療用として栽培されてきました。ヨーロッパに到着した最初の東洋のスパイスの一つであるといわれており、古代ローマではAD200年には課税対象物になっています。中国漢方処方に初めて記載されたのは漢の時代(AD25〜220)後期です。インドのアーユルヴェーダでは(vi-shwabhesa)“万能薬”で知られ、アーユルヴェーダ、中国漢方共に全処方薬の約半分に使用されているといわれています。日本には2600年以上前に渡来したとされ、食用、薬用、調味料の原料に普通に栽培されています。

 

 ジンジャーは揮発性オイル、ジンゲロール、ショウガオールを豊富に含んでいます。ショウガオールはジンゲロールが分解してできるもので、乾燥させるだけで発生し、ジンゲロールよりも2倍刺激性があります。従って、乾燥ショウガは生のものよりも辛く、中国漢方では生のもの(生姜)と乾姜を区別し、別の目的で使用されています。

 

2.ショウガ属について

 ショウガ属は、約100種類からなる属で、アジアの熱帯原産です。すべての種類がアシに似た茎と芳香性の根茎を持っています。さまざまなジンジャー(ショウガ類)が温帯地域で商業用に栽培されています。とくに、ショウガは薬用、治療用、香味料として世界中で珍重されています。他に料理用として使用されるものには、東南アジア産のZ.cassumar(カスマル•ジンジャー)、Z.mioga(ジャパニーズ•ジンジャー、ミョウガ)があります。ミョウガは熱帯アジア原産ですが、日本でも山野に自生しており、広く民家で栽培されています。Z.zerumbet(ワイルド•ジンジャー、ビタージンジャー、ハナショウガ)は、インド•マレーシアの種です。この種は細胞毒性のゼルムボンを含んでおり、中国で癌治療に使用されています。

 

3.ジンジャーの栽培と生産量について

 ジンジャー(Zingiber officinale)は、インドが原産であるとされていますが、現在では、南アジア、東南アジア、熱帯アフリカ(特にシエラレオネ、ナイジェリア) 、ラテンアメリカ、カリブ海(特にジャマイカ)およびオーストラリアの商業作物として広く栽培されています。翻訳記事には、米国で使用されるジンジャーは、主に中国産と南米産とハワイ産であると記載されていましたが、日本でも平成21年の数字で生鮮、加工あわせてジンジャー(ショウガ)の製品を約80,000トン輸入しています。第1位が中国、第2位がタイで、生生姜ではその96%(約20,000t)が中国産です。一方、日本の生産量は約40,000tです。県別では、その第1位は高知県で、国内生産量の約40%である約18,000tを生産しています。このことより、日本でも中国のショウガの影響が大きい事がわかります。アメリカと違って国内生産量の多い日本では、中国生姜の値上がりは、国産生姜に有利に働いているのかもしれませんが、そのような記事は見つけることができませんでした。

 

4.ジンジャーの用途

 ジンジャーは古来より、世界各地で、食材、香辛料として、また生薬として様々に利用されています。

 日本料理ではすりおろすか、すりおろしたものを醤油と合わせて薬味として使用されます。日本料理、中華料理では魚や肉料理の臭味を消すためにも多用されています。ショウガの根茎をそのまま食べるものとして、酢、塩、砂糖で調味した生姜の甘酢漬けや、梅酢で漬けた紅生姜があります。

 ヨーロッパの料理では、乾燥させ、粉末状にしたスパイスがより普及しています。ジンジャークッキー、ジンジャーブレッドなどの焼き菓子がよく知られています。生姜飴、生姜糖、葛湯、冷やし飴(飴湯)、ジンジャーエール、生姜茶(センガンチャ)などの飲料の材料としても、甘い味と合わせて用いられています。

 

5.ジンジャーの薬用利用

 中国では、ジンジャー(生姜)の根茎は健胃作用のある生薬<生姜 (ショウキョウ)>として利用され、多くの漢方処方に配合されています。発散作用、健胃作用、鎮吐作用があるとされており、風邪の初期症状、胃腸の冷えなどによる胃腸機能低下防止などに使用されています。蒸して乾燥させたものは乾姜(かんきょう)と呼ばれ、興奮作用、強壮作用、健胃作用があるとされています。胃腸の冷えによる機能障害では乾姜が使用さます。

 インドのアーユルヴェーダでは、生のジンジャーは、発汗剤として、風邪、咳、嘔吐、ヴァータの不調などに効果があるとされています。関節炎や、心臓の強壮剤、外用薬として痛みや頭痛などにも使用されています。乾燥したジンジャーは去痰剤としてとしても使用されています。

 西欧でもジンジャーは薬用利用の歴史があります。英国王立園芸協会のハーブ大百科には以下のように記載されています。

 <薬用>乗り物よい、吐き気、朝の吐き気。消化不良、疝痛、腹部の冷え、風邪、インフルエンザ、末梢循環不全に内服する。皮膚炎、消化器潰瘍、高熱の患者に使用してはならない。外用薬として、痙攣痛、リューマチ、腰痛、月経痛、捻挫に有効である。

 中国漢方では咳、風邪、下痢、嘔吐、風邪による腹痛に生の根茎、子宮出血、血尿、生または炭化した根茎、腹部膨満、浮腫に根茎の皮、ショックに伴う悪寒、膵臓の代謝不全による消化不良、慢性気管支炎に乾燥根茎をそれぞれ内服する。

 ドイツのコミッションEモノグラフ (薬用植物評価委員会) では、消化不良と乗り物酔いに対してその有効性を承認しています。つわりや術後の吐き気、嘔吐の軽減に対してはその有効性を示唆しています。乾姜は冷えを除く目的で使用されています。

 日本薬局方においては、単に乾燥させた根茎を生姜(しょうきょう)、蒸してから乾燥させたものを乾姜と区別しています。生姜は芳香辛味性健胃薬とし、また漢方では鎮嘔の目的で使用します。生姜は生のものを指すとして、乾燥した根茎は乾生姜として区別する場合もあります。

 

6.ジンジャーの安全性

 メデイカルハーブ安全性ハンドブックでは以下のように分類されています。

・生の根はクラス1 (22) 。(適切な使用において安全)

・乾燥した根はクラス2b、2d (胆石のある人は使用するときに医療従事者に相談すること)(22) (58) 。

 独立行政法人国立健康•栄養研究所:健康食品の安全性•有効性情報データベースには以下のように記載されています。

・ヒトに対する安全性については、通常の食品として摂取する場合は安全と思われる。

・乾燥したショウガ根茎を大量に摂取することは妊婦および6歳以下の小児には勧められない。

・胆石のある人が乾燥した根茎を使用する場合、事前に医療従事者に相談する必要がある。

                           記  阿部俊暢

 

参考資料

*  アーユルヴェーダのハーブ医学:出帆新社

*  最新薬用植物学:廣川書店

*  フリー百科事典ウイキペデイア 英語版、日本語版

*  牧野和漢薬草大図鑑

*  英国王立園芸協会 ハーブ大百科

*  メデイカルハーブ安全性ハンドブック

*  独立行政法人国立健康•栄養研究所:健康食品の安全性•有効性情報データベースWebページ

*  メデイカルハーブ安全性ハンドブック