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阿部俊暢

宮城県仙台市出身。定禅寺通りのけやき並木と同じ1958年生まれ。2003年阿部代表とともに定禅寺ハーブギャラリーを開業。夢は世界中のハーブを集めたハーブ農場の開設。JAMHA認定ハーバルセラピスト、AEAJ認定アロマテラピーインストラクター。

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2013年7月

2013年7月28日 (日)

潜在的に有毒な漢方薬についての警告(2)

ハーブ•アロマテラピーを学ぶ方のための海外ハーブ事情

第79回目の話題:” 潜在的に有毒な漢方薬についての警告(2)”です。米国植物協議会  The American Botanical Council(通称「ABC」)の(ABC  HerbalEGram2013年5月号)のリンク記事の解説です。

 http://cms.herbalgram.org/heg/volume10/May2013-HerbalEGram.html

800pxtorikabuto_01

Scientific name: ( unknown Aconitum )

This plant has the hard poison in the flower, the leaf, the stalk, and the root.

Source: Photo taken by Kumaapr9 at Mt.Hijiri in Japan.

Date  : 2005/9/3

Author: Kumaapr9

Permission: Kumaapr9 put it under the GFDL

The following is explanation in Japanese.

 

 

前号より続く。

今回の記事にある漢方薬に使用されていたトリカブトは、古来より猛毒を持つ植物として知られ、毒薬や矢毒として使用される一方で薬用としても利用されてきた植物です。

 

1.トリカブトとは

 トリカブト(鳥兜・学名Aconitum)は、キンポウゲ科トリカブト属の総称です。この属には、有毒で塊茎上の耐寒性の多年草が含まれており、北半球の温帯の林地や草原、水辺に約100種が分布しています。日本には約20数種が自生しています。トリカブトの仲間は花の色は紫色の他、白、黄色、ピンク色などで、多くは多年草です。沢筋などの比較的湿気の多い場所を好みます。トリカブトの名の由来は、花が古来の衣装である鳥兜・烏帽子に似ているからとも、鶏の鶏冠(とさか)に似ているからとも言われています。英名の"monkshood"は「僧侶のフード(かぶりもの)」の意味です。

 トリカブト類はすべてがアルカロイド系アコニチンを含んでいます。これは現存する植物性毒素の中で、最も強いもののひとつとされています。A.ferox( インドトリカブト)が最も強い毒性をもつと考えられ、ついでA.napellus(モンクスフード)が続きます。それにもかかわらず、さまざまな種類が世界各地で医療用に使用されているのは、正しく使用した場合の治療効果が、捨てがたいからです。

 A.carmichchaelii(カラトリカブト)はAD200年代の中国の医療文献に初めて言及されています。そこにはふたつの漢方薬の名前があり、烏頭(ウズ)は生の根、附子(ブシ)は塩と砂糖で調理した根の意味です。日本では.

A.carmichchaelii(カラトリカブト)とともにA.japonicum(オクトリカブト)が同様の名前で使用されています。

2.漢方薬としてのトリカブト

 漢方ではトリカブト属の塊根を附子(ぶし)と称して薬用にします。鎮痛、抗リウマチ、強心作用を目的に使用されています。附子が配合された漢方処方はたくさんあります。しかし、毒性が強いため、附子をそのまま生薬として用いることはほとんどなく、修治と呼ばれる弱毒処理が行われます。熱汗やほてり、しびれ等症状が現れる場合は使用を中止するとの記載があります。

附子が配合されている漢方方剤の例を以下に示します。

葛根加朮附湯/桂枝加朮附湯/桂枝加苓朮附湯/桂芍知母湯

芍薬甘草附子/麻黄附子細辛湯/真武湯

 記事の処方の“Zheng Tian Wan”はネット上の検索によれば、“正天丸”という中国漢方の処方と思われます。

“正天丸”の適応症は“各種頭痛(神経性頭痛、血管性頭痛、偏頭痛、緊張性頭痛、頚椎病型頭痛)、三叉神経痛、生理痛など。”、成分は“当帰、川弓、細辛、紅花、防風、独活、附子等15種類の漢方薬。”と記載されています。

 個人輸入によりインターネット通販で手に入れることができますが、日本では処方として認められていないようです。

 3.代表的なトリカブト種

(1)カラトリカブト(ハナトリカブト)

カラトリカブト(aconitum carmichaeli 同義語;A. fischeri)は、キンポウゲ科のトリカブト属の多年草で、東アジアと東ロシア原産で、一般的にはチャイニーズアコニチン、 カーマイケルモンクスフード、あるいはチャイニーズウオルフズバーンなどの名で知られています。

 約1.5mに成長し、3〜 5枚の 卵形の耳たぶのある革のような葉をつけます。 秋に兜状の青い花を円錐花序につけます。 園芸植物として評価され、数多くの品種が開発されています。観賞用の切り花としても売られています。

 英国王立園芸協会のハーブ大百科には以下のように記載されています。

<利用部位>根

<特徴>鎮静、鎮痛性ハーブ。心臓、腎臓を刺激し、利用、抗リューマチ作用がある。

<薬用>ショック、外傷性による陽エネルギーの低下の回復及び、慢性変形性関節炎に内服する。投与は危険が伴う。過剰摂取は唇、舌、手足の末端の麻痺、嘔吐、呼吸困難、心拍及び血圧の低下、そして昏睡から死に至る。外用薬としては、リューマチ、関節炎、頭痛、局部麻酔に有効。妊婦及び衰弱した患者に投与してはならない。有資格の専門家のみが扱うこと。

<警告>国によってはこのハーブを法規制の対象とする。

(2)モンクスフード

Aconitum napellus(モンクスフード、アコニチン、ウオルフスバーン、夫子、モンクスブロード)は、キンポウゲ科の仲間のトリカブト属の手多年草で、西部および中央ヨーロッパ原産す。毛のない茎と葉を持ち、高さ1mに成長します。葉は丸みを帯び、5〜10cmbの直径で、掌状に5から7の深い耳たぶのあるセグメントに分かれています。 花は青紫色から濃い紫色であり、ヘルメットの形をした狭い長方形で1-2cmの長さです。

 英国王立園芸協会のハーブ大百科には以下のように記載されています。

<利用部位>根

<特徴>鎮静、鎮痛性ハーブ。心臓と中枢神経に作用し、解熱効果がある。

<薬用>顔面神経痛、関節炎、痛風の痛止めに内服する。外用薬として座骨神経痛、関節炎。類似療法ではショック(特に手術、産後)、水痘、はしか、おたふく風邪、クルップ、歯痛と歯が生えるさいの問題、冷えによる、または冷えによる悪化した諸症状に使用する。有資格の専門家のみが扱うこと。

<警告>国によってはこのハーブを法規制の対象とする。

 最新薬用植物図鑑には

“ヨーロッパ産のA.napellusの根をアニコット根と呼び、そのチンキ剤を鎮静、鎮痛薬として、神経痛、リューマチなどに用いる。”

と記載されています。

(3)インドトリカブト

Aconitum virorumとしても知られているAconitum feroxは、キンポウゲ科のトリカブト属の多年草です。インドトリカブトとして知られている。インドの西ベンガル州のダージリンヒルの最も標高の高い地点であるSandakphuで豊富に生育しています。

 高さ1.0m幅0.5mまで成長する落葉性多年草で、多数の雄しべを持つ大きな人目を引く青、紫、白、黄色やピンクの左右対称のヘルメット状の花を付けます。

 よく知られているインドの毒、bikh、BISH、またはnabeeはこの植物より作られ、猛毒であるアルカロイドpseudaconitineを大量に含んでいます。

(4)オクトリカブト

オクトリカブト(Aconitum japonicum)は、日本に自生するトリカブト屬の植物の1種です。北海道南西部と本州に分布し、山野のやや湿った林中にはえる多年草です。草丈は30〜100cm。花期は8月〜10月で約3cmほどの青紫色の兜状の花をつけます。日本では上記カラトリカブトとともに、その塊根から生薬の附子が作られ薬用にされます。

牧野和漢薬草大図鑑には、”使用を誤れば人名にかかわる有毒植物なので、一般には決して使用してはならない。“と記載されています。

(5)その他日本のトリカブト

 北海道にはエゾトリカブト(A.yezoensisi)、近畿地方中部から中部地方にはヤマトリカブト(A.japonicum Thumb Var montanum Nakai)、中部の高山地帯にはハクサントリカブトA.hakusanense Nakai)などが見られます。これらの大部分は同様の有毒成分を含んでいますが、自生地によって含有量が異なることが多いといわれています。北海道のエゾトリカブトはアイヌの矢毒として知られています。

4.日本でのトリカブトに関連する法規について

 一般的に植物の栽培に関しては、「麻薬及び向精神薬取締法」などの特別な法律で規制されている大麻など以外は規制されていません。よってトリカブトも園芸植物として普通に販売されています。トリカブトから作られる製剤などの加工物の製造、所持については、「毒物及び劇物取締法」、販売については「薬事法」が該当すると思われます。

 「毒物及び劇物取締法」については、一般的に有毒植物が“毒物及び薬物”が指定される例はあまりなく、リストの中にトリカブトを見つけることはできませんでした。

 薬事法では「専ら医薬品として使用される成分本質リスト」に収載されているので、一般に販売することは法違反になると思われます。

 

 

                           記 阿部俊暢

 参考資料

*フリー百科事典ウイキペデイア 英語版

*英国王立園芸協会 ハーブ大百科

*牧野和漢薬草大図鑑

*最新薬用植物学

*メデイカルハーブ安全性ハンドブック