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阿部俊暢

宮城県仙台市出身。定禅寺通りのけやき並木と同じ1958年生まれ。2003年阿部代表とともに定禅寺ハーブギャラリーを開業。夢は世界中のハーブを集めたハーブ農場の開設。JAMHA認定ハーバルセラピスト、AEAJ認定アロマテラピーインストラクター。

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2013年2月

2013年2月17日 (日)

コクランコラボレーションが、UTI予防のためのクランベリーについての2008年の結論を修正する(3)

ハーブ•アロマテラピーを学ぶ方のための海外ハーブ事情

第49回目の話題:“コクランコラボレーションが、UTI予防のためのクランベリーについての2008年の結論を修正する()”です。米国植物協議会  The American Botanical Council(通称「ABC」)の(ABC HerbalEGram201212月号)の記事の解説記事です。

http://cms.herbalgram.org/heg/volume9/December2012.html

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前号までの翻訳記事の解説。

 今回の記事は、世界的に権威のある医療行為の検証機関であるコクランコーポレーションが、尿路感染症に効果のあるハーブとして人気のあるクランベリーの評価をくつがえし、あまり効果がないと結論づけたことに対する話題です。

 クランベリーは、特に女性の尿路感染症の予防に効果があるとして、何十年もの使用実績があり、米国でも最も人気のあるハーブサプリのひとつです。コクランコーポレーションは、2008年のレビューで10件の研究を分析し、尿路感染症に効果があると結論づけていましたが、2012年10月に更新されたレビューでは、検証された研究の信頼性への疑問から結論をくつがえし、効果には疑問があるとしました。この結論は業界の内外で様々な議論を呼んでいますが。今回はこのことと、日本でのクランベリーの現状について解説してみたいと思います。

1. コクランコーポレーションとは

 コクランコーポレーション(The Cochran Collaboration)は、1992年にイギリスで始まった、治療、予防に関する医療技術を評価(アススメント)するプロジェクトです。コクランとは最初にこのプロジェクトを提唱した人の名前です。2009年現在、世界13カ国にセンターをもち、活動の中心となるのは、「コクラン・レビュー」の作成です。「コクラン・レビュー」はコクランコーポレーションにより作成されたシステマティック・レビューのことです。質の高さで定評があり、年4回更新されるコクラン・ライブラリーに収載されています。

 *システマティック・レビュー(系統的レビュー)とは

あるテーマについて収集した個々の臨床試験文献を、総括的に評価した論文のことで、信頼性が最上位のエビデンス(証拠文献)です。食事摂取基準の策定もシステマティック・レビューでなされています。

2. クランベリーとは

 クランベリー(Vaccinium macrocarpon)はツツジ科スノキ属ツルコケモモ亜属の常緑小低木です。匍匐性で。革のような固い葉と、白からピンクの花、そして光沢のある赤いタルト味の果実をもちます。北米原産の植物で、北部および中央ヨーロッパで栽培されています。ジュースは果実から製造され、マサチューセッツ州を主要な生産地として広く米国で販売されています。

 一般的にクランベリーと呼ばれる植物は上記Vaccinium macrocarponを含めて、以下の4種が知られています。

•Vaccinium macrocarpon または Oxycoccus macrocarpus( ラージクランベリー 、 アメリカンクランベリー 、ベアベリー)

•Vaccinium oxycoccosまたはOxycoccus palustris( コモンクランベリーまたはノーザンクランベリー) (和名:ツルコケモモ)

•Vaccinium microcarpumまたはOxycoccus microcarpus( スモールクランベリー )(和名:ヒメツルコケモモ)

•Vaccinium erythrocarpum または Oxycoccus erythrocarpus( サウザンマウンテンクランベリー)(和名:アクシバ)

 そのうち日本には、Vaccinium macrocarpon以外の3種が自生しています。どの種も、北海道、本州北部など寒冷地の高層湿原でなどで見られるようです。

 クランベリーの名前は、"craneberry"に由来し、最初、拡張した花、茎、萼、花弁がツルの首、頭、くちばしと似ていると感じた、アメリカへの初期のヨーロッパ人入植者によって名付けられといわれています。歴史的には、クランベリーは、アメリカの入植者によって傷や血液中毒を治療するためのパップ剤として使われ、壊血病(ビタミンCの欠乏によって引き起こされる疾患)を防ぐために食べられました。 また、クランベリーとその葉は、胃の病気、肝臓障害、発熱、腫れた腺、おたふく風邪を含む様々な症状を治療するために使用されてきました。

 伝統的に、果実は、同じく尿路感染症を治療するために、または、失禁がある人々のための尿の脱臭剤として使用されています。食品として、クランベリーは、フルーツジュース、ゼリー、ソースで広く使用されています。

近年では、臨床研究の多数が、尿路の健康に対するクランベリージュースとその抽出物の使用について肯定的な成果を示しています。

3. スキノ属について

 スノキ属(すのきぞく、学名:Vaccinium、和名漢字表記:酢の木属)はツツジ科の属の一つです。常緑または落葉の低木で、まれに小高木なります。世界に約450種があり、日本には19種が自生しています。ビルベリーやブルーベリーなどは栽培されれています。クランベリー、ブルーベリー、コケモモ、ビルベリー、ハックルベリーといった欧米で果樹として利用されてきた植物を多く含んています。

4. 日本での薬用使用について

 最新薬用植物学、牧野和漢薬草大図鑑とも、薬用のスノキ属の植物については、コケモモ(Vacinium uitis-idaea L )1種のみが記載されていました。

“葉にアルブチンを含み、尿道防腐、利尿剤として用いる。またはウワウルシの代用として使用された。実は下痢止めにする。”と記載されていました(牧野和漢薬草大図鑑)

 日本では、クランベリーとコケモモ、ツルコケモモなどの区別がはっきりとされていないようです。ネット上の商品の記載でもどの種類かわからないものが多くみられます。

5. クランベリーの作用機序

 記事によれば、クランベリーの作用機序は、“以前は科学者たちは、クランベリー中の有機酸が尿を酸性化し、抗菌剤として作用すると信じていた。しかしながら現在の仮説は、特定のタイプのPAC(プロアントシアニジン)が粘膜に細菌が付着するのを阻害する。”としています。日本ではまだこの情報は一般的ではなく、ネット上での情報もほとんどが、尿が酸性化することによる抗菌作用を上げています。「メデイカルハーブの事典:林真一郎編」にも、“キナ酸とい特殊な成分が代謝をうけて馬尿酸と呼ばれる物質になり尿が酸性化する“と記載されています。

 実験室段階では、この作用は確認されているので(コクランレビューでもこの点は認めている)、今後は人間での実際の効果がはたしてあるのかといことになります。

 

6. クランベリーの安全性

メデイカルハーブ安全性ハンドブックには未収載です。

国立時健康•栄養研究所の健康食品データベースには、

“一般的には、ツルコケモモを経口投与した際の耐容性は十分である。しかし、極端に多い量を投与すると、例えば3〜4Lのジュースを毎日飲用すると消化管障害や下痢を引き起こすことがある。1日当り1L以上を長期間飲用すると、尿酸腎結石のリスクが高くなる可能性がある”と記載されています。

プロトポンプ阻害薬との薬物相互作用の記載もありました。

同Webサイトにも同様の記載がありました。

 他には、クランベリージュユースは通常その強い酸味のため、加糖されているため、糖尿病などに注意という記載が何件かみられました。

 プロトンポンプ阻害薬とは胃の壁細胞のプロトンポンプに作用し、胃酸の分泌を抑制する薬です。

7. 日本での販売の現状

 ケンコーコムのwebサイトでは、クランベリーで検索すると、204件が表示されました。サプリやジュースとして販売されているものが多数です。アマソンの通販サイトでは、2546件が表示されました。同様に、ジュース、ハーブサプリ、ドライフルーツも販売されていました。アマゾンでは“こけもも”“つるこけもも”でも商品が販売されていました。その区別については不明です。

8. まとめ

 今回の話題は、いってみれば、ハーブの有効性を証明するのがいかに難しいかということにつきると思われます。日本での商品の販売状況でも見られるように、現実の市場ではクランベリーといっても、種類の違った植物が、ジュースやサプリ、ドライフルーツなど様々な加工形態で流通しています。同じ植物の同じ製品でも、産地や製造、流通、販売などの様々な形の中で、成分量を含めて品質にバラツキがでることは避けられないことです。一方、摂取する人々の側も、年齢や健康状態、生活環境など様々であり、この中で一定のサンプル数を集めて結果を判断することは非常に困難を伴います。今回、否定的な見解に代わった主な理由は実験方法の不備ということですが、記事にもあるとおり、そもそもハーブの有効性のような複雑な事象に、臨床試験によるメタアナリシス分析のようなひとつの手法だけでは評価は難しいのかもしれません。かといってそれ以外に有効な手段がないのも事実であり、今後もたびたび、賛否両論がマスコミをにぎわすと予想されます。

参考資料

*ABC(米国植物評議会)Web  有効成分モノグラフ、

*メデイカルハーブ安全性ハンドブック(メデイカルハーブ広報センター)

*ハーブ大百科(英国王立園芸協会 誠文堂新光社)

*牧野和漢薬草大図鑑(北隆館)

*最新薬用植物学(廣川書店)

*健康データベース(独立行政法人国立健康•栄養研究所編)

*独立行政法人国立健康•栄養研究所Web 健康食品」の安全性•有効性情報

*メデイカルハーブの事典(林真一郎編)

*ハーブ図鑑(ジュニー ハーデイング)

*コクランコーポレーション Web

*フリー百科事典ウイキペデイア:日本版、英語版