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阿部俊暢

宮城県仙台市出身。定禅寺通りのけやき並木と同じ1958年生まれ。2003年阿部代表とともに定禅寺ハーブギャラリーを開業。夢は世界中のハーブを集めたハーブ農場の開設。JAMHA認定ハーバルセラピスト、AEAJ認定アロマテラピーインストラクター。

2019年12月14日 (土)

薬としての食品:ブロッコリー

ハーブアロマテラピーを学ぶ方のための海外ハーブ事情

今回の話題:薬としての食品:ブロッコリーです。ABCHerbalEGramの記事シリーズの“Food as Medicine”により取り上げられた植物を紹介しています。今回は、ブロッコリー(1)です。

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写真;ウイキペディア日本語版より

栽培範囲と生息地

  ブロッコリーは野生のキャベツの栽培品種である。野生のキャベツは地中海の北部と西部の海岸に沿って起源があり、そこで何千年も前に飼料作物となった。やがて、野生のキャベツは生産者によって、ブロッコリー、芽キャベツ、カリフラワー、コラードグリーン、ケールなど、明らかに異なる品種や栽培品種のB. oleraceaに育成された1。B. oleraceaは、簡単に交雑するため、この種の仲間の分類は、情報源に応じて変化する。ブロッコリーの他の学名にはB. oleracea var. italica and B. oleracea, broccoli group.などがある。

  ブロッコリーは、急速に成長する一年性の食用作物で、1〜2フィートの高さに成長し、60〜150日以内にブロッコリーの花冠、または花を産生する(成長時間は、主に品種や気候条件によって異なる)1。野菜のブロッコリーは、通常花冠の段階で食べられるが、実際には未熟な花(花序)の状態である。植物がクラウン(花冠)期を過ぎるまで畑に残し、花を咲かせると、ブロッコリーの種子ができる。ブロッコリーのスプラウトは、ブロッコリーの種子を光と水とともに約3〜4日間栽培すると出てくる。

  ブロッコリーは、その太い茎と木のように配置された密集した花冠を特徴としており、どちらも食べられる1,2。 この野菜の枝分かれした性質は、花冠からたくさんのスプラウトを作りだすのを方可能にする。緑色のブロッコリーは最も一般的な栽培品種であるが、円錐形に成長する緑色がかった黄色のヘッドを持つ、紫色のブロッコリーとロマネスコブロッコリーも市場で入手可能である。開花させると、ブロッコリーは小さな黄色または白の花を咲かせる。

植物化学物質その成分

  ブロッコリーは非常に栄養密度が高く、低カロリーの野菜である。カップ1杯のブロッコリーの小花は1杯の米と同じ量のタンパク質を含み、カロリーは3分の1少なくなる3。ブロッコリーはビタミンC、K、A、葉酸、可溶性繊維も豊富である。治療用の食品として、ブロッコリーの摂取は、眼球乾燥症、またはビタミンA欠乏による眼の結膜および角膜の異常な乾燥および炎症、ならびにビタミンC欠乏による小児壊血病、および葉酸欠乏による貧血の治療に推奨されている4。14人のボランティアがブロッコリー200 gを1日1回7日間摂取した臨床試験では、血液検査により、カロチノイドルテインとビタミンEの血清濃度の増加が示された。

 ブロッコリーに見られる重要な二次代謝物質にはセレノシステイン、グルコシノレート、およびフェノール化合物が含まれる。セレノシステインはセレニウムの一種であり、グルコシノレート産生を増加させることにより、抗がん機能に対して役割を果たす5。ブロッコリーに含まれるグルコシノレートは硫黄含有化合物で、茎に最も高濃度で含まれており、体内の解毒プロセスを大幅に促進する。グルコシノレートは、抗菌性および抗真菌性を有するイソチオシアナートに変換される6。フェノール酸やフラボノイドを含むフェノール化合物も、ブロッコリー、特に種子や新芽中に大量に含まれており、フリーラジカルや酸化ストレスから保護し、炎症を軽減する5。

  グルコラファニンと呼ばれる特定の種類のグルコシノレートは、さらに、より生物活性の高いイソチオシアネート形態であるスルフォラファンに変換することができる。グルコシノレートは、抗酸化酵素を活性化し、炎症を軽減する化学予防剤である7。 ある研究では、グルコラファニン成分はスーパーマーケットで見られるブロッコリーの異なる品種間で10倍以上も変化すること、そしてブロッコリーの種子や芽がグルコラファニンをはるかに高い濃度(50倍以上)で含有することも確定した8。ブロッコリースプラウトには最高レベルのグルコラファニンが含まれている。グルコラファニン、人体が環境汚染物質や発ガン物質を代謝するのを助け、尿を通してそれらを排除する貴重な能力を持っている9。

  グルコラファニンとスルフォラファンについて行われた研究は、中国のような大気汚染の激しい地域に住む被験者にとって有望な結果を示唆している10。 身体から毒素を除去する能力はまた、喫煙または他の環境要因によって引き起こされることがある肺疾患の慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療のためにグルコラファニンを使用する可能性への研究の扉を開いた11。スルフォラファンは微生物、特に胃潰瘍、胃炎を引き起こし、胃がんにつながる可能性があるHelicobacter pyloriに対して、抗生物質効果をもたらす9。

  処理方法は、ブロッコリーのグルコシノレート、スルフォラファン、ポリフェノール、および抗酸化活性の量と質に影響する12。 一般に、ブロッコリーを茹でると、グルコシノレートの損失は最大になる。これらの化合物は水溶性だからである。10分間茹でたブロッコリーは、生のブロッコリーと比較した場合、そのグルコシノレート含量量の40%を失う13 。100℃未満の温度で2〜5分間の電子レンジ加熱、スチーム処理、または湯通し処理を行うと、グルコシノレート、およびグルコラファニンをその最も活性な形態であるスルフォラファンに加水分解するのに必要な酵素を最大限に保持できる。調理の前に切ったり刻んだりしてもこの効果は最大になる5。いくつかの研究では、水蒸気処理したブロッコリーは、フェノールとフラボノイドのバイオアベイラビリティーが高いために、より高い抗酸化力を示している5,12。 貯蔵も役割を果たす。市販の冷凍ブロッコリーを製造するのに必要な加工は、新鮮なブロッコリーと比較したときにスルフォラファンのバイオアベイラビリティーを低下させているかもしれない14。

  ブロッコリーの適切な選択と貯蔵は、栄養価を最大にするための鍵である。花冠は品種に応じて濃い緑色または紫色であるべきであり、そして茎および枝は触れると堅さがあるべきである。ブロッコリーの芽は緑の頂部と白い茎を持つべきである。黄変やしおれは、栄養素の損失を示している3。花は使用前に洗浄する必要がある。スプラウトは使用直前に洗浄し、購入後数日以内に摂取する必要がある。

References(参照)

1.Broccoli. New World Encyclopedia website. October 7, 2008. Available here. Accessed February 15, 2016.

2.Van Wyk B. Food Plants of the World: An Illustrated Guide. Portland, OR: Timber Press; 2015.

3.Murray M, Pizzorno J, Pizzorno L. The Encyclopedia of Healing Foods. New York, NY: Atria Books; 2005.

4.Owis AI. Broccoli; the green beauty: a review. J Pharm Sci & Res. 2015;7(9):696-703.

5.Mahn A, Reyes A. An overview of health promoting compounds of broccoli (Brassica oleracea var. italica) and the effect of processing. Food Science and Technology International. 2012;18(6):503-514.

6.Vale AP, Santos J, Melia N, et al. Phytochemical composition and antimicrobial properties of four varieties of Brassica oleracea sprouts. Food Control. 2015;55:248-256.

7.Jang HW, Moon JK, Takayuki S. Analysis and antioxidant activity of extracts from broccoli (Brassica oleracea L.) sprouts. J Agric Food Chem. 2015;63:1169-1174.

8.Fahey JW, Zhang Y, Talalay P. Broccoli sprouts: An exceptionally rich source of inducers of enzymes that protect against chemical carcinogens. Proc Natl Acad Sci USA. 1997;94:10367–10372.

9.Fahey, JW. Role of Glucoraphanin: Role of glucoraphanin/sulfurophane from broccoli and broccoli sprouts in protection against cancer and other oxidative and degenerative diseases. Talk presented at: IFT Annual Meeting; July 15-20, 2005; New Orleans, LA. Available here. Accessed February 12, 2016.

10.Kensler TW, Ng D, Carmella SG, et al. Modulation of the metabolism of airborne pollutants by glucoraphanin-rich and sulforaphane-rich broccoli sprout beverages in Qidong, China. Carcinogenesis. 2012;33(1):101–107.

11.Experimental treatment for COPD in development [press release]. Baltimore, MD: Johns Hopkins Bloomberg School of Public Health; April 13, 2011. Available here. Accessed February 11, 2016.

12.Choudhury SP, Khaled KL. Estimation of antioxidant and antinutritional factors of green broccoli florets and their effects on boiling. American International Journal of Research in Formal, Applied & Natural Sciences. 2014;8:41-43.

13.Jones RB, Frisina CL, Winkler S, Imsic M, Tomkins RB. Cooking method significantly effects glucosinolate content and sulforaphane production in broccoli florets. Food Chemistry. 2010;123:237-242.

14.Saha S, Hollands W, Teucher B, et al. Isothiocyanate concentrations and interconversion of sulforaphane to erucin in human subjects after consumption of commercial frozen broccoli compared to fresh broccoli. Mol Nutr Food Res. 2012;56(12):1906-16.

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 ブロッコリーは、キャベツの仲間のアブラナ科アブラナ属の植物で花芽を食べる野菜です。地中海沿岸が原産とされ、ローマ時代から日常的に食べられていたという記録が残っています。日本へは明治時代になってカリフラワーと共に入ってきたと言われています。  

 ブロッコリーは北海道から沖縄に至るまで、全国各地で生産されています。その中でも沢山作っているのは北海道と愛知県、埼玉県です。

 ブロッコリーはアメリカなどからも輸入されており、国内でも収穫時期をずらしながら各地で栽培されているので通年安定して流通していますが、本来最も美味しい旬の時期は晩秋の11月頃から冬3月頃です。

                             記 阿部